「最速レジェンド」という挑戦がある。「シーズン開始直後に誰が最速でレジェンドに到達できるか」を競うというものだ。これまで何人ものトッププレイヤーが挑戦し、ある者は志半ば倒れ、またある者は激闘の末に栄光をつかんだ。
最速レジェンド達成の瞬間
今回、4月のシーズンで栄光をつかんだのが神奈川県在住21歳大学生のTredsred選手である。通常20時間前後はかかると言われるこの最速レジェンドを勝率66%(91勝45敗)13時間18分という驚異的な速度で達成した。そんなTredsred選手に達成の感想や上達の方法などを訊いたので、その内容を以下に掲載する。
―4月のアジア地域最速レジェンド達成おめでとうございます。達成の感想は?
Tredsred: ありがとうございます。「意外と簡単だった」というのが正直な気持ちでした。月末でランキング100位以内に入れるレベルで、挑戦する時間がある方なら誰でも達成できる気がします。挑戦中は友人の声援にも助けられました。「寝るな」と(笑)。10~20時間の戦いになるので、「あきらめず続けられるかどうか」が最大のポイントかもしれません。私も眠気でミスをしないように栄養ドリンクを飲んだり、間違いのないよう指を使って計算したり、とにかく思考力を落とさないよう工夫していました。
—過酷な「最速レジェンド」に挑戦したのは何がきっかけだったのでしょうか。
Tredsred: もともとはシークレット・パラディンのデッキガイドを書こうと思っていて、その過程でいろいろ試していただけなんです。エサゾンビと秘密の番人はどっちが強いのかな、とか。試していたらなんだか勝ち進めてしまって、「もしかしたら最速1位を狙えるんじゃないか」と思って続けることにしたんです。
また、レジェンド1位を取って自己最高ランクを更新したかったというのもあります。シーズン開始後にレジェンドの上位層が固まってしまうとなかなか順位が上がらないですからね。レジェンド1位を狙うなら、プレイヤー数が少ない月初が一番であるように思います。
—今回の記録は91勝45敗13時間18分で、過去のほかの選手の記録と比べても格段に速いようです。Tredsred: そのようですね。要因には「1つのデッキ(シークレット・パラディン)をずっと使い続けたこと」もあるかもしれません。いろいろなデッキを使っていると細かい部分を忘れてミスも増えますが、同じデッキをずっと回していれば使い慣れてきてミスも減りますからね。眠気で頭が働かなくなっても大丈夫です(笑)。また、序盤に運が悪く相手にリードされてしまったときのために、聖別を入れて、かつヘドロゲッパーを2枚にしたんです。自分はこの構成が今の環境で最も強い、シークレット・パラディンのリストではないかと考えています。
右はレジェンド最速1位を獲得したシークレット・パラディン(クリックで拡大)。詳細なガイドはTredsred選手のブログにも掲載されているので参照のこと
—ご自身についてもお聞きします。ハースストーンを始めたのは何がきっかけだったのでしょうか。
Tredsred: 友達に勧められたのがきっかけでした。なんでも別のゲームのプロ選手が、配信の空き時間にハースストーンをプレイしているのを観て見つけたそうなんです。当時ハースストーンがオープンベータだったので、2014年2月頃だと思います。
―2年間もハースストーンのプレイを続けられているのは何が理由なのでしょうか。
Tredsred: 覚えることが多いこと、わからないことが多いことでしょうか。ランダム要素が適度にあるおかげで、このゲームは全く同じ盤面になることってまずないじゃないですか。常に新しい盤面と遭遇して、その都度考える必要があります。何回も繰り返しやっていても正解がなかなか見えてこないんです。だから飽きずに続けられているのかな、と思います。
—「考える必要があること」の具体例としては?
Tredsred: マリガン(初期手札の選択)は特に難しいですね。単純に「このカードはキープし、このカードは返す」というのは無い気がします。相手だけではなく「マッチアップの有利不利」も考えてマリガンしなければいけません。
ミッドレンジ・ドルイドだとわかりやすいかもしれません。ドルイドが有利なフリーズメイジやコントロール・ウォリアーが相手なら、手札事故が起こらないようにそこそこの手札でもキープしますが、ドルイドが不利なズー・ウォーロックやテンポメイジ相手には練気や野生の繁茂を全力で探しにいき、ドルイドの理想的な動きを押し付けられるようにします。というのも、不利な相手には強い手札を引かないとどの道負けてしまうからです。
このように、有利なマッチアップと不利なマッチアップによってマリガンの方法を変える必要があります。このあたりが奥が深くて面白いな、と思います。
右はTredsred選手のミッドレンジ・ドルイド(クリックで拡大)。詳細なガイドはTredsred選手のブログにも掲載されているので参照のこと
—Tredsred選手はご自身のブログにもハースストーンの戦術に関する記事を投稿しています。これを始めたきっかけは?
Tredsred: 一言で言えば好きだからなんですが、記事を書くのはいろいろな面でメリットがあると思っています。他人に向けて記事を書くことで自分の考えも整理されますし、記事を読んだ人がいろいろな反応や意見を返してくれるので大きな刺激になるんです。
—昨年の日本語版リリースから新規のプレイヤーも大きく増えました。どうやったら上達できるかを模索している方も多いようです。そんな方々にTredsred選手がアドバイスを送るとしたらどんな内容になりますか?
Tredsred: 「自分のミスをなくしていくこと」でしょうか。日本のコミュニティを覗いていると、実績や勝ち負けを必要以上に気にしている方が多いように感じます。「レジェンドになれない」とか「3連敗してしまった」といったところですね。ランクは1つの結果に過ぎませんし、運要素のあるゲームなので負けるときは負けます。まずは自分のミスをなくしていくこと。そうすれば上達し、自然とランクも上がるようになってきます。
—なるほど。別の話になりますが、最新拡張版「旧神のささやき」が4月末もしくは5月初頭にリリース予定です。この中で気になっているカードはありますか?
Tredsred: 6マナ2/8で自分のターン開始時に攻撃力が強化されるドラゴンの「鱗の悪夢」が気になっています。ドラゴンといったコンセプトデッキ好きなんですよ。ドラゴンウォリアーなどが活躍するきっかけになれば、と思っています。カバルの影の僧侶に取られてしまいますが…。
ただ、「私が気になっているカード」はたいてい活躍しないです(笑)。この2年間、新カードが出る度にことごとく予想を外してきましたから…。ゲーム内で実際に使ってみないとわからないことが多いんですよね。
—最後にお聞きしますが、Tredsred選手は今後どのような方針で活動されていくのでしょうか。
Tredsred: まずは選手として春季選手権を目指したいと思っています。配信をする予定はありませんが、ときどき記事を書いて自分の意見を表現できればと考えています。
—本日はどうもありがとうございました。
Tredsred選手の関連リンク
Tredsred選手が一番好きなカードはインプ使い。「初めてレジェンドを達成したトークン・ドルイドに入っていた思い出深いカードです。今ではパワー不足かもしれませんが、スタンダード・フォーマット導入後に何とかして活用法を見出したいですね」とのこと
これまでのコミュニティ・インタビュー
- 【コミュニティ・インタビュー】 ハースストーン冬季選手権日本代表、mattun選手 - 大会後インタビュー
- 【コミュニティ・インタビュー】ランク戦プレイ2月シーズン日本トップ、NanoSecond選手
- 【コミュニティ・インタビュー】 ハースストーン世界選手権ベスト4、Kno選手