【コミュニティ・インタビュー】ランク戦プレイ2月シーズン日本トップ、NanoSecond選手

【コミュニティ・インタビュー】ランク戦プレイ2月シーズン日本トップ、NanoSecond選手

月末のトッププレイヤーは大忙しである。ハースストーン世界選手権の切符となる「ハースストーン世界選手権ツアーポイント」が、月末のランク戦プレイ100位以内に入ることで手に入るからだ。世界を目指すプレイヤーは皆、月末のポイント獲得を目指して熾烈な戦いを繰り広げるというわけだ。

そんな中、ランク戦プレイ2016年2月シーズンのアジア地域の最終順位で日本のプレイヤー中トップの成績(18位)という成績を収めたのがNanoSecond選手。月末のランク戦で上位に残る方法やスタンダード・フォーマットの印象、そして3月12日と13日に迫るハースストーン日本選手権について訊くことができたので、以下にその内容を紹介する。

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—まずはご自身やハースストーンを始めたきっかけについて、自己紹介をお願いします。

Nanosecond: 大阪府在住の25歳会社員です。ハースストーンを始めたのは2014年2月のオープンベータテストですね。以前はFPSをプレイしていたのですが、FPSの有名な配信者がハースストーンをやっていたのを見て興味を持ちました。それ以前はカードゲームの経験はありません。

—カードゲームの経験がないのは珍しいですね。ハースストーンの魅力はどこだと思いますか?

Nanosecond: 1ゲームが手軽にできることでしょうか。FPSだとものすごく集中してプレイしないといけなかったり、チーム戦なので味方と戦術を合わせないといけなかったりしますが、ハースストーンだと個人で気軽にプレイできます。それでいて奥が深いのがいいですね。

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―本題に移りましょう。改めて、2月シーズンの18位おめでとうございます。日本人の中ではトップの戦績でした。よく「月末のランク戦は熾烈」と言われますけれども、先月の感触はいかがでしたか?

NanoSecond: ありがとうございます。ただ、私自身はそこまで熾烈な印象はないんですよね。「月末のランク戦の戦い方」をある程度知っているせいかもしれません。私の場合、シーズン後半から常に「レジェンドランクの2桁をキープ」するようにしています。いつでも上位に手が届くようにするためです。最終日の前日は70位でしたが、運よく9連勝できたこともあって、一気に15位まで上がりました。その順位のまま対戦せず止めていたところ、月末を18位で終えることができたんです。

—ある程度までランクを上げてキープするということですね。

NanoSecond: はい。一度負けると戻すのに3勝かかりますから……。おもしろかったのが、22位で止めたら30分後にはランクが落ちていたのに、15位で止めたら3時間経ってもほとんど変化がなかったことなんです。一定のラインを超えるとほかのプレイヤーに追いつかれにくくなるのかもしれません。「安全圏」とも言えますね。実のところ、最終日はランク戦をプレイしてないんですよ(笑)。

―先月のランク戦ではどんなデッキを使っていたのでしょうか?

NanoSecond: 「コンボドルイド」と「マリゴスローグ」です。マリゴスローグはナイフの雨千刃乱舞という全体除去が4枚入っているため、「シークレットパラディン」や「ズーウォーロック」などのミニオンを横に並べるデッキに対して戦いやすいのが強みです。謎めいた挑戦者といった強力なミニオンを出されても昏倒で対応できます。ほかの海外プレイヤーもマリゴスローグで南北アメリカの1桁台に行ったりしていましたから、環境に合っているように思います。

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NanoSecond選手のコンボドルイドとマリゴスローグ(クリックで拡大)

—マリゴスローグはプレイングが難しいデッキと聴きます。

NanoSecond: そうですね(笑)。トッププレイヤーのマリゴスローグを観戦していても、けっこう「ミスかな?」と思ってしまうプレイがあったりします。私の場合は、始めてから2年間ずっとローグを使ってきた経験が生きているのかもしれません。これまでローグのデッキもいろいろな変化があったとはいえ、基本的な呪文やミニオンは共通していますから。「この相手には最初にこの手札を残す」「この呪文はこのタイミングで使う」といった知識は全部覚えているので、ゲーム中の判断にもあまり迷わなくて済むんです。

—そういった知識をNanoSecond選手はどのように身に付けたのでしょうか。

NanoSecond: 強い人のプレイからです。ハースストーンを始めたときからずっと、トッププレイヤーの配信を観ていました。何よりも自分の考え方との違いを学べるのが大きいですね。「ここでミニオンを交換しないで、相手のヒーロー本体を攻撃しにいくんだ」とか、「ここで除去を使うんだ」といった感じです。強い人のプレイを観ることで自分の引き出しが増えていき、結果的に実力も伸びる印象です。

—他人のプレイを観ることを重視しているということですね。

自分だけでずっとプレイしていると、ときどき「正しいプレイをしているはずなのに勝てない」といったことがあります。そんなときは一度対戦を止めて、他人のプレイを観るようにしています。そうやって軌道修正をするのが大事なんです。

もしかすると、他人がプレイしている2時間の中で、自分のプレイと違うのはほんの3分だけかもしれません。でも、ずっと観ていると「その3分の差がランク戦で上に行けるかどうかを決めている」のがよくわかります。そういうのに気付けるとおもしろいですね。

—具体的にはどのように配信を観ていますか?

NanoSecond: 勉強したいデッキがあったら、たとえばそのデッキが上手いプレイヤーたちの配信を3つか4つ開いて同時に観ます。頭は疲れますけど(笑)、そうやって自分を追い込んで考えるのも楽しいんです。

―「勝つのが好き」というよりは「考えて上達していくのが好き」という印象ですね。

NanoSecond: そうかもしれません。上達して何かをつかむ感覚が好き、というのをよく感じます。

—ランク戦や大会では外国人選手と対戦する機会も多いと思います。海外の選手と日本の選手で違いを感じることはありますか?

NanoSecond: 大会だと差はほとんど無いと思いますが、ランク戦では海外の選手が一歩先に進んでいる印象です。先ほど述べた「ランク戦の戦い方」を熟知しているのはもちろん、「デッキの調整力」のセンスも何か違う気がします。

ランク戦だと、日や時間帯によって微妙に流行りのデッキの傾向が変わっていくじゃないですか。ランク戦ではその「環境の微妙な変化に対応してデッキを組む能力」が求められると思うんです。私のデッキにしても、たとえばドルイドにハリソン・ジョーンズ精神支配技士を入れたりして、よく調整していましたからね。

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―今年2月に発表された、スタンダード・フォーマットについてはいかがでしょうか。

NanoSecond: 昔からのプレイヤーとしては、ゲームに変化が生まれることは素直にうれしいですね。今はずっと続けているプレイヤーが知識面で大きなアドバンテージを持っています。そのため始めたばかりの人がベテランのプレイヤーと戦うと、知識の差だけで負けてしまうことがよくあるんです。スタンダード・フォーマットで周期的にカードが入れ替わることで、今後新規とベテランのプレイヤーが対戦しやすくなると思います。

―スタンダード・フォーマットの到来に備え、何か準備していることはありますか? 使用するデッキなど。

NanoSecond: 特にはないですね。配信をしているので、「おもしろいデッキを使ったほうがいいかな」とは思っていますが……(笑)。今月レジェンドに到達したジャイアント・エコーメイジはなかなか楽しかったです。「スタンダード・フォーマットが出てくる前に、昔流行ったデッキを使っておこう」と思って始めたんですが、意外と勝てます(笑)。勝率は7~8割ですね。初動が「フリーズメイジ」と同じなので、対戦するドルイドやウォーロックがフリーズメイジだと思い込んで全力でヒーローの体力を削りにきてくれるんですよ。それをメディヴの残響で増やした溶岩の巨人で返り討ちにするのが楽しい(笑)。

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ヒーローの体力が10点以下の場合は溶岩の巨人を0マナで出せる。メディヴの残響でコピーした溶岩の巨人も0マナになるため、「1ターンで8体の溶岩の巨人を戦場に並べる」といった動きも可能

元々は2015年4月の「ブラックロック・マウンテン」登場時に一時期流行ったデッキですけど、今使ってみてもおもしろいと思います。デッキ内容がばれていないおかげで勝てている印象ですけど(笑)。

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メディヴの残響溶岩の巨人を増やした盤面

—「誰も中身を予想できないから強い」というわけですね(笑)。3月12日(土)と13日(日)には「ハースストーン日本選手権」が開催されますが、注目している選手はいますか?

NanoSecond: 「Team Mobcast」、「DetonatioN」、「DeToNator」など、プロとして活動しているチームに所属する選手たちでしょうか。彼らが出場権を獲得しているのはさすが、という印象ですね。また、去年10月の日本語版リリースから始めた新規プレイヤーたちも徐々に頭角を現してきている印象です。「ベテラン対新規プレイヤー」といった構図も見られるかもしれません。

—そういった視点で大会を観戦しても楽しめそうです。最後にお聞きしますが、NanoSecond選手は今後どのような方針で活動していくのでしょうか。

NanoSecond:  私自身は「プレイヤーとして何かを残したい」といった思いはあまりないですね。それよりも「コミュニティに貢献したい」という気持ちが強いです。どんなゲームもコミュニティがないと始まりませんからね。先日大阪で開かれた「炉端の集い」には残念ながら仕事で行けなかったのですが(笑)、機会があればイベントを手伝ったりしてみたいと思っています。

—本日はどうもありがとうございました。


NanoSecond選手の情報は下記でチェックできます。

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NanoSecond選手が最も好きなカードは影隠れ。いろいろな使い方ができるのが楽しいという

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