アジア太平洋冬季選手権、mattun選手大会後インタビュー

3月25日~27日にアメリカ・ハリウッドで開催されたハースストーンアジア太平洋冬季選手権に日本代表として出場したmattun選手。大会はDay 3で敗れてしまったものの、またとない舞台で非常に貴重な経験を積むことができたようだ。帰国直後のmattun選手に大会の感想を訊くことができたので、以下にその内容を掲載する。

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mattun選手

—ハースストーンアジア太平洋冬季選手権ではすばらしい試合をありがとうございました。大会を終えた今のお気持ちを教えてください。

mattun: 勝ちたかったですね(笑)。チャンスがあっただけに悔しかったです。試合は勝たないと意味がないですから。でも、同時に自分に足りない点も知ることができました

—足りない点というと?

mattun: 一言で言えば「絶対的な自信」でしょうか。冷静に判断したり、戦術の傾向を読んで最適なデッキを持ち込んだり、ミスをしても動揺しないようにしたり。普通のオンライン大会ならまだしも、アジア太平洋選手権という大舞台でこれらを完璧にするには、やはり自分に絶対的な自信がなければいけません。

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対戦席 

—大会での具体例としては。

mattun: Pinpingho選手との第3戦、コントロール・ウォリアー対デーモン・ウォーロックの試合です。試合では消極的な動きをしてしまい、冷静に勝ち筋を探すことができていなかったように思います。たとえば6ターン目にコインを使ってシールドメイデンを出しましたが、そのせいで11マナの17点の火力(グロマッシュ・ヘルスクリーム + デス・バイト + 強打)が出せなくなってしまいました。これにより、相手の体力を一気に削ることができなくなったのが敗因の1つだと考えています。

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Day2 - mattun選手対Pinpingho選手 - Game 3

—配信ではPinpingho選手との第5戦が大きく盛り上がっていました。

mattun: あの試合も自分の弱さが出た試合だと思っています。Pinpingho選手との試合は、実は2-0まで想定通りで、「最後のウォリアーでいかに勝つか」というのが課題でした。「黄金の猿で対ウォリアーに非常に強いアヌバラクを引く」という幸運に恵まれたのですが、その後イリダン・ストームレイジエドウィン・ヴァンクリーフを出してしまったのが敗因だったと思います。

冷静に考えれば、相手にはあの場面でシールドスラム止めの一撃といった除去カードが残っていましたから、ミニオンを出しても倒されるのが確実だったのです。それならもっとも攻撃力が低いマリゴスから先に出し、除去カードの的にするべきでした。そうすれば後続のミニオンを生かすことができますから。「最初にマリゴス、次にグルゥル、最後にイリダン」がベストな展開の仕方でした。

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Day2 - mattun選手対Pinpingho選手 - Game 5

—「大舞台の緊張の中で冷静に判断する」ために自信が必要ということですね。ほかに感じたことはありますか?

mattun: これも自信につながるのですが、大会で勝つためには、「チームを組んで大会に臨む」という、一種のマネジメント的な能力も重要になってくるのではないかと思います。

私は、「このゲームは事前の準備で結果の8割が決まる」と考えています。私の場合、今回は大会前も期間中も練習に付き合ってくれる友人がたくさんいて、それだけで非常に助けられました。しかし海外選手の場合、所属するチームにアドバイザーやアナリストといった役割のメンバーが用意されており、多方面で選手が試合に集中できるようにサポートしてくれることもあるそうです。

重要な準備の1つに、たとえば「大会中に配信を観て相手のデッキ内容を書き出す」といった作業があります。「相手のデッキに何が入っていて何が入っていないのか完全にわかる」というのはそれだけで大きなアドバンテージです。なので私も今大会では現地の試合や配信を観て相手のデッキ内容を極力書き出すようにしていました。しかしそれには時間がかかりますし、練習や戦術の組み立て等、ほかにも必要な準備もあるため、「何もかも万全」という状態で臨むのは難しい状況でした。

この点が大きく現れたのがDay 3のNaviOOT選手とのコントロール・ウォリアー対ハンドロックです。NaviOOT選手のロード・ジャラクサスで決まった試合ですが、実はそれまで私はNaviOOT選手のデッキにそのカードが入っていることに気付いていなかったのです。完全に不意を突かれた形となりました。

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Day3 - mattun選手対NaviOOT選手 – Game 2

友人の話では「配信でロード・ジャラクサスが出ていた」とのことなので、事前に友人とチームを組んでアナリストをお願いしていれば、結果は変わっていたかもしれません。

反対に、NaviOOT選手は私のデッキを完璧に把握していました。Day 3で勝利した後に「デッキに骨董品のヒールロボ1枚じゃ(対フリーズメイジには)足りないよ」と声をかけてきたのです。準備の差を強く感じました。

—「個人ではなくチームで戦う」というのも、選手権に勝利する上で重要なキーワードになるかもしれませんね。しかし、このような場所で文化の違う海外選手たちと接することができたのは、大きなプラスになったのではないでしょうか。

mattun: そうですね。ほかの選手について印象に残っているのは、全員が「絶対に負けない」というものすごい闘志を出していたことです。特にPinpingho選手には「プロ意識」というものを強く感じました。場慣れしていることもあってまったく緊張していなかったですし、体調管理も徹底していて、大会日程中の団体行動の際も「今日は具合が悪いので休ませてもらえませんか」と言ってホテルに戻り、自分の体調を万全にしていました。大会終了後は笑顔になったのですが、大会期間中はずっと真剣な表情を崩しませんでした。彼の姿勢には学ぶべきところが多かったです。

—Pinpingho選手は今大会でも一番の優勝候補と評されていました。

mattun: 実は今大会優勝者のDDaHyoNi選手も「Pinpingho選手が優勝すると思うよ」と話していたんです。理由は「持ち込んだデッキが一番強いから」。

今大会は「コントロール(長期戦型)のデッキが増えるだろう」というのが大方の予想で、私も「何よりも対コントロール・ウォリアー、次に対レノウォーロック、そして対フリーズメイジ」というふうにトレンドのデッキ対策を意識してデッキを用意しました。マーロック・パラディンとマリゴス・ウォーロックを持ち込んだのはそのためです。しかし私のコントロール・ウォリアーはアグロ(速攻)デッキ対策を意識して選択した面もありました。選手権出場選手が地域予選で使っていたデッキの1/3がアグロだったので、その印象を捨てきれなかったようです。「対コントロールに特化できなかった」という点でも自分を信じる気持ちが足りなかったのかな、と思っています。

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mattun選手のデッキリスト

逆に、Pinpingho選手のデッキリストは完全に対コントロールに特化した構成でした。「自分を信じて決断する」というPinpingho選手の力強さが現れた構成だと思います。 

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Pinpingho選手のデッキリスト

—そのPinpingho選手が大会でDDaHyoNi選手に敗れたのは、大会の解説者たちにとっても予想外だったようです。

mattun: Pinpingho選手のデッキはたしかに強力でしたが、対処法はあります。「ドルイドではなくウォリアーを禁止することで、少しフィールドを変えて戦う」ことです。DDaHyoNi選手の勝因は、その戦術を採用していたことにもあるのではないでしょうか。

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Day3 - Pinpingho選手対DDaHyoNi選手 - Game1

—試合ではそういった駆け引きもおこなわれていたのですね。それでは、今後の目標について訊かせてください。

mattun: 私はこれまで「戦術の傾向を読んでデッキを組むこと」や、「コンクエスト形式の試合でのデッキの出し方」が自分の長所だと思っていましたが、今大会で補うべき部分が多いことに気付かされました。今大会で学んだことを糧に、次回の春季選手権に向けてさらなる努力を重ねたいと思います。応援していただいた皆さん、どうもありがとうございました。

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Day2は4歳の娘さんが描いてくれたという「ハースストーンTシャツ」を着て戦った。「ハースストーンを一緒に遊んでいるせいか、妻以上に応援してくれました」とmattun選手

—どうもありがとうございました。

なお、mattun選手は4月3日(日)14時30分から開催される「炉端の集い@東京」にゲストとして出席する。イベント情報はこちら

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