開発者の洞察:科学の舞台裏にアートあり!

開発者の洞察:科学の舞台裏にアートあり!

ようこそ!「ハースストーン」チームのシニア・エフェクト・アーティスト、ハディージャ・チェンバレンです。

「ハースストーン」チームで働くことで好きなことの一つは、映像効果を作ることです!ゲームデザインという視点において、視覚効果(VFX)の主な役割は、面白く興味深いやり方でプレイヤーに情報を伝えることです。

視覚効果は、プレイヤーが盤面を見て、何が起こっているかをより明確に理解することを助けます。また私たちは、ハースストーンのノリとキャラクター性を補強するためにも、視覚効果を使っています。「ナイフ・ジャグラー」のナイフが期待した場所に飛ぶかどうかのドキドキ感や、パックを開く時のワクワク感を演出し、またとんでもないコンボを叩きこんだり、ソロ・アドベンチャーを完全クリアした時などの劇的瞬間を盛り上げることにも、特殊効果は役立っています。

「博士のメカメカ大作戦」では、爆発とサイエンスに満ちた視覚効果を、1メガトンほど作りました――私のお気に入りをいくつか紹介しますね!

クラスのアイデンティティーを保つ

「ハースストーン」のクラスのどれかをプレイしている時には、そのアイデンティティーをしっかりと感じられるようにしたい、と私たちは考えています。クラスのアイデンティティーの多くは視覚効果と、そのクラスに共通した視覚効果、色、素材、そして図形を通じて定義されています。例えば、プリーストはマジカルで儚い…光と純粋さがアイデンティティーとなっています。ですが「博士のメカメカ大作戦」のような拡張版には、多少の変化球も導入しました。例えば、「それに加えてさらにスライムまみれだったらどうなるだろう?」どうすれば、クラスアイデンティティーを保ったまま、プリーストをスライムっぽくできるでしょうか?

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各クラス(そして、マーロックや海賊のような「種族」)には、アイデンティティーを補強するために使用している、特定のカラーパレットがあります。「クローンマスター・ゼレク」と「ゼレクのクローンギャラリー」では、クローン用のねばねばは全てに、ほとんどのプリースト用効果が使用しているのと同じライトゴールドのパレットを使用しています。さらになじみ深く、プリーストらしくなるようにと、できる限り多くの光とマジカルの要素を混ぜこんであります。また、ゼレクはイセリアル種族である、という口実のもとに少々インチキをして、ゼレクには余分なマジカル要素を盛り込みました――「クローンギャラリー」が非常にスライミーな分、バランスを取ろうとしたのです。

Slimy, yet satisfying...

プリーストをスライミーにするのは手ごわいチャレンジでしたが、天文学のフレーバーをドルイドからメイジにクロスオーバーさせるのはさらにトリッキーでした。私たちはクラスごとの違いを際立たせるため、形とパレットをしっかりと分けることに、大いに注力しました――私が思うに、ドルイドの宇宙魔法は「月」を主軸に据えたものです(「星の雨」、「星の炎」、「星霊交信」のような呪文はクールな月イメージのパレットと、より大きな図形を使っています)。メイジの宇宙魔法は銀河や星雲を喚起し、魔術のビジュアルにはより小さい、きらめく星型を使用しています。

べとべと――スーパーなべとべと!

カードの視覚効果をデザインする際は必ず、第一にゲームプレイを考えますが、私は以前のセットにはなかった何かを登場させようともします。全般的に、特定のカードの種類の視覚効果には、似たようなやり方でアプローチする傾向があります。例えば「闇の抱擁」「動物大暴走」など、自分のターン中に効果が継続するものは、それが継続的なものであることを示すため、画面全体にビネット(画面の中心より周囲部分を暗くする効果)をかける傾向があります。これらはクールに見えますが、同時に「重く」感じる場合もあります。「フループのスーパー肥料」では、プレイヤーが恐るべきコンボをプレイするのに集中でき、かつ必要なフィードバックは受け取れるようにと、もう少し軽いアプローチを試みようと考えました。

盤面には何もしないと決めていたため、まずヒーローに注目するのは最も論理的です。このカードでは、ターン終了までずっと出ていても目障りにならず、プレイヤーの気を散らせることのない、持続的で目立つ視覚効果(そしてクールな効果音)をヒーローに与えようと考えました。

私たちが何もかも科学的手法で解決できた、とお思いかもしれませんが、実のところ「これらのカードに対してどう視覚効果のバランスを取るか?」という疑問への解をくれる数式などありません。最初から、カードのコンボに含まれるイベントはわかっています(「フループのスーパー肥料」の場合、ミニオンの死亡とマナクリスタルの回復です)。視覚効果をデザインする上では、そいういったことに加えてカードのストーリーや、我々科学的コミュニティに属している者が「Big Dealness」(つまりゲームプレイにおいてどれほど「一大事」かの度合)と呼んでいる尺度をガイドラインとして利用しているのです。

目覚めよ、メックトゥーン!

「ハースストーン」で私たちが作った視覚効果の中でもお気に入りのもののいくつかは、「一大事」なカード達のものです――例えば「メックトゥーン」のような!私たちが視覚効果に利用する傾向のある「劇的瞬間」には3つの種類があります。

  • 第一の種類は、メカニック的に重大な効果のあるカードのもので、デッキを交換する「キング・トグワグル」、ミニオンを絶滅させる「メテオ」、また対戦を終わらせる「メックトゥーン」などが含まれます。
  • 第二の種類は祝うべき瞬間で、「V-07-TR-0N」への合体、「貪りのアザーリ」で相手のデッキを焼き尽くす、また「メックトゥーン」の能力発動に成功したターンなどが含まれます。
  • 第三の種類は「このターンにはもうできることほとんど残ってないよね」といったもので、例えば「捻じれし冥界」による盤面の根絶、「デスウィング」による盤面の根絶、そして「メックトゥーン」による何もかもの根絶が含まれます(メックトゥーンは実に多才ですね)。

これら「一大事」用の視覚効果の目的は、その記念すべき瞬間とプレイヤーの達成を、ユニークなやり方で祝うことです――メックトゥーンが、V-07-TR-0Nやデスウィングと同じに感じられてはいけないのです。彼らはそれぞれに違った一つだけの花で、その輝く瞬間は独特でなければなりません!つまるところ、これらをデザインする時の私の思考プロセスは単に「どうやって、スゴい視覚効果にしよう?」というだけではなく、「どうやって、このカードとイベントならでは、と感じられるようなスゴい視覚効果にしよう?」ということでもあるのです。

「メックトゥーン」の場合、巨大で不吉な機械的誤動作が盤面全体に広がっていき、最後に対戦相手まで巻き込む、というアイデアでした。彼の登場時の視覚効果とは対照的に、劇的なクライマックスです。

超電磁合体メカ

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「博士のメカメカ大作戦」で最も興味深い新メカニックと言えば、「超電磁」が上がるでしょう。

「超電磁」の仕組みには細かな要素が大量に含まれており、視覚効果は多くの異なる情報を伝える必要がありました――「有効な対象」、「合体させる(あるいはさせない)ためにはミニオンをどこにドラッグするか」、「何が何に合体しようとしていたか」などです。その上さらに、全体的な「超電磁」というファンタジーを補強しつつ、視覚効果を派手にし過ぎない(でないと、合体することが常に「正しい」選択だと感じられてしまいます)さじ加減も必要でした。全てをバランスよく、そしてプレイヤーにとって明確であるよう保つことは非常に困難なチャレンジでした。

初期のUIモデルは決定稿よりもはるかに合理的なものでした。ビームはなく、代わりに少しばかりの火花のついたアタッチ・ポイントの矢印を使っていました。もっと大きくてシンプルな図形が必要だと気づいたため、矢印などの小さなUI要素を次々と排除していき、もっと直接的で「マジカル」に見えるつながり方を求めました――最初は少々火花の密度を増やし、最終的にはビームになりました。

このプロセス全体はコラボレーションで進められました――UIチームと私は新しいアイデアをぶつけ合っては互いにコンスタントにフィードバックを返し、初期にはプレイテストの度に大小さまざまな変更が行われました…たぶんデザインチームは、私からのフィードバックのリクエストはもう結構、と思っていることでしょう。

ハンマー・ダンス

開発プロセスにおいては時々、他のチームによる予想外の変更により、自分の計画にヒビが入ることがあります。「スーパーコライダー」はまさにその例です。当初、「スーパーコライダー」には視覚効果は一切ありませんでした――エンジニア側による変更で、ヒーローをピンボールのように、1体のミニオンから別のミニオンへとバウンドさせるだけの計画だったのです。ところが、エンジニアたちがこのシーケンスを変更しようと考え始め、それが結局「厄介なこと™」がいっぱいに詰まったミミズの缶でした。

もちろん「厄介なこと™」を回避しようと試みるのは普通のことです。そんなわけで、私たちが計画していたのとは違うタイミングで、「スーパーコライダー」のファンタジーを再視覚化しなければならない事態になったわけです。最終的に、「スーパーコライダー」は巨大なハンマーでミニオン同士をぶつけ合うのですが、当初は実に素っ気ないものでした。

これが視覚効果のタスクとなった時点で、実は「スーパーコライダー」のアニメーションはかなりとんまな感じだということも判明しました。動作のタイミングを変えることは一切できなかったため、既に組み込まれているすべてのピースに効果を同期させる必要がありました――一見単純そうですが、タイミングよく楽しく感じられるようにするには、大量の手数がかかりました。

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ほとんどの視覚効果はクライアント側だけで処理されます――ダメージや回復の数値さえ正常に受け渡しできていれば、対戦中にどんな視覚効果が発生しようと、サーバー側で気にする必要はありません。しかし「スーパーコライダー」は、視覚効果だけに必要な情報を、サーバー側とクライアント側の両方でほぼ均等に必要としていました。あなたが「スーパーコライダー」を振るう度、不憫な小さなハンマーはアニメーションが再生されている間、クライアントとサーバーの両方に情報をもらおうと走り回らなければならないのです。

このような超奇妙な効果はほとんど全てのセットに含まれており(君たちのことですよ、「アザリナ・ソウルシーフ」と「圧し潰す壁」)、毎回そいうったことを解決するのをとても楽しんでやっています。

無限の軍団を動かす

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「博士のメカメカ大作戦」は視覚効果やアニメーションを作るのが実に楽しい拡張版でしたが、特に「ケンゴーの無限軍団」のものを作っている時が最高でした。私はパーティクル効果が花を添えるキーフレームアニメーションが好きなので、どれも細部や二次的アクションが異なるビルドのアニメーションを3つ作ることは超クールでした。そしてオーディオチームは、いつものように、それらをはるかに良くしてくれました。

クラスのアイデンティティーを保つことの重要さについてはこの記事の前の方でも書いていますが、レジェンドミニオンはよりキャラクター主導かつ独特であるため、かなり自由にできる余地があります。私たちは、そのレジェンドがどのクラスのものか、という点から始めるよりも、カードのアートと物語からヒントを得て、それから適切だと感じられるまでクラスのフレーバーを混ぜ込む、というやり方を好んでいます(もし中立であれば、一切制約なくウィズバン並に自由にやれます)。

レジェンド呪文は比較的楽しめる部類でした。レジェンドミニオンがそうであるようには厳密にストーリー主導というわけではありませんが、同じくらいレジェンド級だと感じられつつ、同時にかなりメカニクス寄りであることが理想です。

ここまで読んでくれてありがとうよ!ハディージャが導いてくれたアニメーションの冒険は楽しかったかい?「博士のメカメカ大作戦」で、あんたのお気に入りの視覚効果を持つカードはどれだい?コメント欄から教えてくれ!


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